こんなこともうつ病の原因に?人生に潜むストレス、着目するのは『変化』
うつ病が発症する原因は単一ではなく、人間関係のトラブルや仕事上の負荷、もともとの性格や考え方の傾向や身体の不調など、さまざまな要因が複合的に絡み合って発症します。
誰しも、職場や家庭でトラブルを抱えれば憂鬱な気持ちになって落ち込むのは自然なことですし、慣れない育児や、充分な睡眠が確保できない状態であれば、体の負担が徐々に心にまで影響することもあるでしょう。
それに加えて、完璧主義で成果にこだわるあまりに現状に満足せず自分を追い込みすぎる傾向がある人や、「“~しなければならない”、“~であるべき”、という縛りが厳しい」「他人の目や評価を過度に気にする」といった考え方の傾向がある人は要注意と言えます。
そして、上記以外でも、ストレスを引き起こしやすい環境要因があります。 親近者との死別や離別などはもちろん大きなストレスとなりますが、一見、喜ばしいことや、気持ちが浮き立つようなイベントでも、隠れたストレスの要因となりうるのです。
「思い通りに行動できない」「力を発揮できない」「気分が落ち込む」…と抑うつ状態になったとき、自分の生活でどんな出来事があったかを振り返り、「今はこういうストレスがかかっている状態なんだ」と客観的に意識しておくことは、必要以上に自分を責める“堂々巡り”にストップをかけ、早期の対処が可能になります。
日常に潜むストレスの要因にはどのようなものがあるか、またそれはなぜストレスとなってしまうのかを、ご紹介いたします。
1.ストレスとなる出来事(ライフイベント)と、その度合いは
社会生理学者ホームズと内科医レイ(HolmesとRahe)は、人生における様々な出来事(ライフイベント)に対し、「このような経験をしたのち、元気を取り戻して再び社会に溶け込む(再適応)には、どのくらいの時間とエネルギーがかかるのか?」を点数化する研究を行いました。
現在、その研究結果は、社会的ストレス評価法として用いられています。
順位 | 出来事 | ストレス度(点数) |
---|---|---|
1 | 配偶者の死 | 100 |
2 | 離婚 | 73 |
3 | 夫婦別居 | 65 |
4 | 刑務所への収容 | 63 |
〃 | 近親者の死亡 | 63 |
6 | 本人の大きなケガや病気 | 53 |
7 | 結婚 | 50 |
8 | 失業 | 47 |
9 | 夫婦の和解 | 45 |
〃 | 退職・引退 | 45 |
11 | 家族の健康の変化 | 44 |
12 | 妊娠 | 40 |
13 | 性生活の困難 | 39 |
〃 | 新しい家族メンバーの加入 | 39 |
〃 | 合併・組織変更など勤務先の大きな変化 | 39 |
16 | 家計上の変化 | 38 |
17 | 親友の死 | 37 |
18 | 配置転換・転勤 | 36 |
19 | 夫婦げんかの回数の変化 | 35 |
20 | 住宅ローンが多く残っている | 31 |
21 | 借金やローンの抵当流れ | 30 |
22 | 昇進・降格・移動 | 29 |
〃 | 子女の結婚 | 29 |
〃 | 親戚関係でのトラブル | 29 |
25 | 個人的な成功 | 28 |
26 | 配偶者の就職・退職 | 26 |
27 | 本人の進学・卒業 | 26 |
28 | 生活環境の変化 | 25 |
29 | 個人的習慣の変更 | 24 |
30 | 上司とのトラブル | 23 |
31 | 労働時間や労働条件の変化 | 20 |
〃 | 転居 | 20 |
〃 | 転校 | 20 |
34 | レクリエーションの変化 | 19 |
〃 | 社会活動の変化 | 19 |
36 | 宗教活動の変化 | 18 |
37 | 住宅ローンが少し残っている | 17 |
38 | 睡眠習慣の変化 | 16 |
39 | 家族の集まる回数の変化 | 15 |
〃 | 食習慣の変化 | 15 |
41 | 長期休暇 | 13 |
42 | クリスマス | 12 |
43 | 軽度な法律違反 | 11 |
表1)社会再適応評価尺度(Holmes&Rahe 1967)
過去1年間で、ストレス度の点数の合計が、 150~199点で40%、200~299点で50%、300点以上で80%の人が、2年以内にストレスに関連した何らかの疾患を発症する可能性が高いとされています。
たとえばある女性が、結婚(50点)して新居に引っ越し(20点)をし、それに伴って退職(45点)をしたような場合は合計115点ですが、これに加えて義父母と同居(39点)するようになった場合は、154点となり、40%の確率で何らかの疾患を発症する、という見方になります。
1-1.配偶者(パートナー)との死別・離別、家族の健康の変化などは高い値
配偶者(パートナー)と死に別れるということは、人生で起きる出来事の中でも群を抜いてストレスが大きいということになります(100点)。 また、『親友の死』も37点と高い値となっています。
身近な人が亡くなると、いろいろ整理したり、故人のいない生活に慣れることに慌ただしくなりがちですが、故人を悼む時間を充分にとることは非常に重要です。
「なぜ自分がこのように悲しい目に遭わなくてはならないのか」と怒りを覚えたり、「自分にもっと何かできたのではないか」と罪悪感を抱くこともよくあります。そういった感情をないがしろにせず、時間をかけてでもじっくりと故人の死を受け入れていく過程がとても大切となります。
これまでの生活スタイルを変えなくてはならなかったり、自分自身の価値観を試されるときでもあります。相手からの非難に対抗しなくてはならない場面もあるかもしれません。
あらゆるストレスの克服にも、精神疾患の改善にも、安心できる環境に身を置くことは絶対に必要な条件です。したがって、家庭に安息を得られないことによって、いつもよりたくさんのエネルギーが消費されていることを見逃さず、そんな自分を認めてあげることが重要です。
『家族の健康の変化』も44点と高い、上位となっています。
家族が病気やケガなどを負ったとき、本人の苦痛やストレスを軽くすることに心を配ろうとするのは、家族のことですので自然なことです。 しかし、介護を中心に担うメンバーはもちろんのこと、それ以外のメンバーも、心と体に大きな負担を抱えているということを知っておいていただきたいと思います。
それは、うつ病のご家族がいらっしゃる場合も同様です。 (⇒ご家族・パートナーの方へ)
1-2.一見、喜ばしい、楽しいとされるイベントによるストレスも見逃せない
一般的に、悲しみや苦痛等を伴うものだと見られていないような出来事であっても、隠れたストレスの要因となります。
たとえば、 ・結婚…50点 ・妊娠…40点 ・昇進…29点 (降格と同点) ・子女の結婚…29点 となっています。
「おめでとう」「良かったね」といった言葉をかけられるような出来事ですので、本人もそれ自体がストレスだとは思ってもみないかもしれません。たとえストレスを自覚したとしても、それを周囲に話すことは憚られることもあるでしょう。
2.なぜ、ストレスとなってしまうのか
2-1.生活リズム、環境の変化に適応しなければならない
ではなぜ、「おめでたい」「良かった」と自分も周囲も感じるような出来事まで、ストレスの原因になってしまうのでしょうか。
人間は、“変化”に適応しなければならないような状況になったとき、とても大きなエネルギーを必要とします。
決まりきった日常、決まりきったコミュニケーションは、刺激はないものの、心に安定をもたらします。
そこから逸脱することは、軽く混乱する頭を何とか宥めながら、自分が持つ知識や経験を総動員して対処にあたることになります。 そしてその結果もまた、新たな知識として整理していくわけですが、
「今ので良かったのかな?」「もっとこうすべきだったのでは?」「次からはこうした方がいいかな」
といったような、自分自身の考え方と照らし合わせながらの作業となります。
また、それまでの生活リズムが崩れることで、○○の次は△△といった自分独自の段取りを変えなくてはならなくなり、その調整を強いられるだけでも心は不安定になります。
うつ病を患った人に、転職や離婚、結婚をあまり勧めないのは、症状のために判断力が低下しがちだからという理由もありますが、これらが新たにストレスとなって追い打ちをかける懸念があるためなのです。
2-2.役割の変化に適応する
更に、これまで負っていた“役割”が変化するのも、大きな理由のひとつです。
たとえば、『結婚』であれば、女性は、「一人の独身女性」だったのが、「特定の男性の妻として家庭に入っている女性」という、違った役割を負うことになりますし、『妊娠』であれば、「母親」という役割を意識し始めます。
『昇進』であれば、これまで果たしていたものとは異なる職責を負います。
本人の中身は変わらなくても、周囲から違う行動、振る舞いを要求されることになります。 コミュニケーションをとる相手も変わってくるでしょうし、配慮しなくてはならない範囲も広くなるかもしれません。
このように、“変化”に着目していくと、一見喜ばしいことでも、それに適応するために心にかなりの負担を強いているということが、イメージしていただけるのではないでしょうか。
3.変化の渦中にいる自分を認め、労わること
肉親を亡くすなど、それ自体が非常に大きなストレスになることを除けば、何かの出来事でストレスを覚えたとしても、それ単一で疾患を発症することは少ないでしょう。
しかし、それに加えて人間関係がうまくいかないと感じていたり、仕事でかなり負荷がかかって心身ともに疲労しているような場合には、その出来事によるストレスが乗ることで限界点に達することは充分ありえます。
思い通りにならなくて、落ち込んだ気分がなかなか浮き上がってこないような場合には、「私はどうしてしまったんだろう…」と不安に感じ、悪循環に陥りがちです。自分に失望することもあるかもしれません。
しかし、
・「こういうことを経験したから、ストレスになっているのかもしれない」
・「○○という役割から△△という役割に変化して、適応しようとがんばっているからだ」
と客観的に自分を観察することによって、「落ち込むのも自然なことだ」と認めることができれば、必要以上に自分の状態に不安を感じることがなくなります。
もし、自分の周りで表1のストレス評価尺度の項目にあるような出来事を経験した人がいたら、「○○で大変じゃない?」とさりげなく声をかけて労わることで、当人も「そうなの、実は…」と話しやすくなるかもしれませんね。
うつ病の症状とは/心と身体に表れる10の症状
うつ病は、精神的にも身体的にも様々な症状が現れますが、初期の軽い段階では、「体調が一時的に悪いだけだ」「甘えているだけだ」と見過ごしてしまいがちです。
加えて、うつ病になりやすい人というのは責任感が強く自分に厳しい人が多いため、「自分がダメな人間だからだ」「頑張りが足りない」などと自分を叱咤し、つらくても走り続ける傾向があります。
また、家族や同僚から見て、いつもと比べて様子がおかしいと感じても、それがうつ病によるものかの判断は難しいことも多いようです。
実際に私も、「これはうつ病なのか、ただの甘えではないのか」と懐疑的になったご本人やその身近な人から、ご相談をお受けすることがあります。
うつ病の症状を見逃し、ストレスや体の不調をそのまま放置していると、うつ病の進行に伴って症状に対する感覚も段々鈍くなり、認識する力そのものが低下していきます。結果的に、自覚できないままどんどん悪化してしまいます。
したがって、心と身体の状態をよく観察し、症状が軽い段階でなんらかの対処をすることはとても重要です。
うつ病の症状にはどのように表れるか、 うつ病と『甘え』『怠け』との違いは何か等、ご説明させていただきます。 また、うつ病の人を見守る立場の方々にとっても、本人の言動に振り回されず冷静に対処するために、その症状をよく理解するご参考にしていただければ幸いです。
1.うつ病の症状はどのように表れるか
誰しも、仕事でミスをしたり、人間関係でトラブルがあれば気分が落ち込むものですが、大抵はしばらくすると元気になります。一方、うつは以下のような症状が2週間以上、ほぼ毎日続き、日常生活に支障を来します。
1-1.強い抑うつ気分
うつ病の特徴的な症状です。憂うつで、重苦しい気分が続きます。このような状態を「抑うつ」といいます。
気分が晴れず、何もやる気が起きません。ため息が目立ったり、表情が暗く、落ち込んだ様子になります。また、ネガティブな発言も多くなるため、周囲の人も気づきやすいのですが、元々の性格だと誤解されることもあります。
抑うつのために、イライラしたり、怒りっぽくなることもあります。
こうした症状は午前中に特に顕著に見られ、午後から夕方にかけて回復していくことが多いとされています(『日内変動』と言います)。
1-2.興味や喜びの喪失
「強い抑うつ気分」と並んで、うつ病の症状において大きな特徴となるものです。
周りの物事や活動に、興味や喜びを感じられなくなります。
行動力が著しく低下し、これまで楽しんできた趣味やスポーツ、旅行や外出なども、やる気が起きなくなってしまいます。意欲を持って取り組んでいた仕事にも手がつかないといったことも見られます。
人と会って話すことも面倒になります。おしゃれや服装にも興味が湧かず、身だしなみに気を配らなくなり、一気に社交性が乏しくなります。異性への関心や、性的な欲求も低下します。
元々が活動的であった人であれば、周囲からは人が変わってしまったように見えることもあるでしょう。
1-3.食欲の減退または増加
一般的に、うつ病では食欲が低下することが多く、そのために体重が1ヶ月で数キロも現象してしまうこともあります。
特に朝食はまったく食べる気が起きなくなり、好物にも興味を示さず、「何を食べてもおいしくない」という状態が続きます。
そのため、睡眠不足と並んで、体力を維持できずに回復を妨げる要因となっている側面もあるでしょう。
反対に、食欲が増加して、甘いものや炭水化物などの特定の食べ物を過食してしまうケースもよく見られます。
1-4.睡眠障害(不眠または過眠)
うつ病にかかった多くの人に、不眠の症状が現れます。
疲れていても寝つきが悪くなり、やっと寝付いても眠りが浅く、重く苦しい夢ばかりみて夜中に何度も目を覚ましたり、早朝に起きてしまったりします。そのため、熟睡感がなく、体も非常にだるくなるため、起き上がれずに布団の中で悶々とし、自分を責め続けることも多いのです。
睡眠不足が原因で、日中に集中力が欠如して仕事でミスをしたり、そのために落ち込んだりイライラするなど、他の精神的症状にも多大な影響を及ぼします。 食欲の低下と並んで、体力を維持できずに回復を妨げる要因となっている側面もあります。
反対に、夜の睡眠が極端に長くなったり、日中も寝てばかりいるといった過眠症状が現れることもあります。
1-5.精神運動の障害(強い焦燥感・運動の制止)
動作が鈍くなったり、話し方がのろのろと遅くなったり、口数が極端に少なくなったりします(精神運動の制止といいます)。
今までてきぱきと問題なくこなしていた家事や仕事、些細な作業にも時間がかかるようになり、動きも緩慢になります。周囲の人も変化に気づきやすいのですが、怠惰な態度の現れだと誤解されることもあります。
反対に、強い焦燥感に駆られてじっとしていられず、そわそわとして落ち着きなく体を動かしたり、ウロウロと歩き回ったりするようになることもあります。貧乏ゆすりが止まらなくなる、早口でせき立てられるように話し続ける、といったことが見られる場合もあります。
1-6.易疲労性、気力の減退
ちょっとしたことでもすぐに疲れてしまい、休んでも疲れが取れません。体が非常に重く、強い倦怠感を感じるようになります。そのため、何もやる気が起きず、それまでは難なくこなしていた家事や仕事も滞りがちになり、周囲には怠けているように見えてしまうこともあります。
本人は、「何とかしなければ」と気持ちは焦るのですが、体も思うように動かず、気力も低下しているので、何とか取り組んでも長続きしません。そんな自分を責め、ますます症状が悪化することもあります。
1-7.強い罪責感
自分は価値の無い、何の取り柄もない人間だと思い込んだり、根拠もなく自分を過剰に責めるようになります。
自分の些細なミスを過大評価して「取り返しのつかないことをしてしまった」「自分のせいで皆が迷惑している」と感じたり、不況で会社の業績が落ちるなど、自分とは関係のないことでも「自分の責任だ」と思い込み、そこから抜け出すことができなくなります。
自分の能力を過小評価しているので、新しい仕事や、責任のあることを任されたりすると「自分にはできないのに…」と負担に感じます。
たとえ成果を挙げたとしても「大したことではない」「誰でもできること」として、自分自身にプラスの評価を与えません。
更には、人から不当な扱いを受けた場合でさえ「こうなったのは自分が悪いせいだ」と結論づけます。 このような無価値感、罪責感が高じると「自分はこの世からいなくなった方が良い」と考え、自殺念慮へ発展する可能性もあります。
1-8.思考力・集中力の低下
注意が散漫になって集中力が低下したり、思考が働かなくなることがあります。そのために仕事や家事が以前のようにこなせなくなったり、学校の成績が落ちたりするようになります。
また、決断力が低下して、大したことでなくてもあれこれ考えて何も決められなくなります。
初期の頃には、「アイディアが浮かばない」「考えがまとまらない」「物忘れがある」といったことで現れますが、症状が進んでくると、今まで難なくこなしていたこともできなくなったり、相手の話していることが理解できなくなってきます。
気力の低下も伴って、実際に仕事の能率も落ちてミスをしたりもするので、「自分はダメな人間だ」「皆に迷惑をかけている」という無価値感、罪責感が生じ、ますます症状が悪化することもあります。
一般に、結婚、退職、転職、離婚、離別といった大きな決断はうつ病のときにやらない方がよいとされます。環境の急激な変化がうつ病を悪化させるという理由もありますが、このように思考力や決断力が低下している状態のため、適切な判断が下せないという理由もあるのです。
1-9.自殺念慮
気持ちが沈み、あまりにもつらいため「死んだほうがましだ」「この世から消えてしまいたい」と考えるようになります。 この『自殺念慮』は、うつ病の症状として顕著に見られるものであり、ほとんどの人が一度は「死にたい」と考えるようです。
「死にたい」という考えが出てきてしまったら、「これは病気のせいであり、本心ではないのだ」と自分に言い聞かせ、気持ちを落ち着かせることが肝心です。
家族や友人など周りの人に「死にたい・・・」「楽になりたい・・・」と漏らすこともあるでしょう。」その場合、もし周りの人から「死んではいけない」と説教されたり、はぐらかされたりすると、「説教されるようなことを言ってしまうダメな人間だ」と自分を責めたり、「理解してもらえない」と失望してしまい、症状に拍車をかける可能性もあります。
一般に、うつ病の症状が重いときには、「死にたい」と思っても実行に移す気力も行動力もありません。しかし、少し症状が回復すると、考えが浮かべばすぐに実行に移す危険があります。周りの人は、外見上元気になったからといって安心せず、注意して見守ることが大切です。
1-10.その他の身体的症状
その他、うつ病に伴う身体症状として、次が挙げられます:
全身の倦怠感 頭痛 めまい 吐き気 動悸 息苦しさ 肩こり 立ちくらみ 耳鳴り 難聴 背中の痛み 胃痛 便秘 下痢 風邪をひきやすく治りにくい 等
ひとつの症状にとどまらず、いくつかを併発することもあり、また次々と変わっていくこともあります。 初期の段階では、精神的症状の前に身体的症状のみが現れることもあるため、内科などを受診し、うつ病と診断されないことがよくあります。
身体症状があるのに検査で異常がない場合は、うつ病の可能性を考える必要があるでしょう。
2.うつ病のサインを見逃さないために
2-1.本人が自覚できるサイン
誰しも、仕事でミスをしたり、人間関係でトラブルがあれば気分が落ち込むものですが、大抵はしばらくすると元気になります。
一方、うつ病は以下のような状態が2週間以上、ほぼ毎日続き、日常生活に支障を来します。
・憂うつな気分が続く
・趣味や好きなものに興味が持てなくなる
・朝、起きられなくなる。
・特に午前中、体がだるく、活発に動けない。
・思考力や集中力が低下し、仕事や家事で小さなミスが多くなる
・思い通りに仕事や家事を片付けられず、滞る
・寝つきが悪くなる。夜中や明け方に目が覚める
・食欲がなくなる もしくは偏った食べ物(菓子パン等)を過食する
(←さらに詳しいうつ病度チェックはこちら)
また、大きなストレスを引き起こしやすい要因となるような出来事が、少なくとも1年半以内にあったかどうかも、判断する目安になります。
例を挙げますと、親近者との死別や離別、離婚、失業、職場でのトラブル、家庭内のトラブル、育児の負担、身体的な病気、睡眠不足(特に5時間未満の睡眠は要注意) などがあります。
必ずしもつらいことや悲しいことだけではなく、結婚、出産、入社、昇進、栄転、新居への引越しなど、一見喜ばしいことでもうつ病を発症することがあります。それまでの生活リズムが崩れることすべてが、ストレスとなりうるためです。
2-2.『甘え』『怠け』との違い
うつ病になりやすい人というのは、責任感が強く真面目でがんばりやな人が多いので、普段から『甘え』『怠け』に対して、自分を厳しく律しているものです。
だからこそ、うつ病の症状に気がついても「これはうつ病ではなく、単に甘えているだけだ」と自分を更に叱咤します。すでにエネルギーは枯渇寸前なのにも関わらず、同じスピードで走り続けることになってしまいます。
うつ病と、『甘え』『怠け』の違いは、 「それをしないことで(あるいはやってしまうことで)、どんなことが待ち受けているのか、事の重大さを充分にわかっていても、どうしてもできない」 ということだと言えます。
今日、仕事を休むことで、どんなに周りに迷惑をかけるのか、それが自分の将来にどんな意味を持つのか…といったことが、ありありとイメージできるのに、それでも布団から起き上がれない。動けない。 悔しい。つらい。なんて私はダメな人間なんだろう。。
そんな葛藤があれば、うつ病の初期症状が出ていると言えるかもしれません。
2-3.周囲の人たちが気づけるサイン
うつ病の場合、客観的に周囲の人々からも目に見えるサインがいくつか現れます。
主に、以下のようなものがあります。
・遅刻・欠勤が目立ってきた
・ボーッとしていることが多い
・身だしなみに気をつけなくなってきた
・仕事の能率が落ちている(職場)
・家事が滞っている(家庭)
・本人が好きなはずの趣味の話などに興味を示さない
それでも、本人が、家族や職場に迷惑をかけたくないという思いから、むしろ普段より明るく振舞おうとすることもあるため、サインが出ていても気づけないことがあります。
仕事の遅れを気に病んだ本人が、遅くまで残業したり休日出勤していると、周囲は「そんなに頑張れるほど元気なのか」と安心することもあるようです。
自分や周囲の人達同士が、お互いに「なんだかいつもと違う?…」と気づけるよう、普段から挨拶を交わしたり、接点を持つようにすることが、うつ病の早期発見と予防に役立つでしょう。
とは言え、サインが見えたからといって、唐突に「あなた、病気じゃない?」「お前、病院行った方がいいぞ」といったような決めつけや直接的な表現を投げかけることは、本人の自信を失わせ、追い詰めることになるかもしれません。
本人も、思い通りにならない自分に気が付いているはずです。
本人の意思を尊重する姿勢を崩さず、 「なんだか眠れていないように見えるのだけど、ゆっくり休めていないんじゃないかと心配しているの」 「君にしては遅刻が続くのはとても珍しいね。私が少し負荷をかけすぎてしまって疲れが溜まっているのかと気になっているんだ」 と、まずは“じっくりと耳を傾ける姿勢”を本人に示してあげましょう。
家族がうつ病になったら?回復を早める接し方、病院との付き合い方
うつ病の克服には、充分な休養や治療の他、身近な人、特に家族の適切な配慮とサポートが大きな効果をもたらします。
しかし実際に、家族がうつ病を発症したら、どう対応すればよいかわからず、混乱してしまうこともあるでしょう。「何とかしなければ…」と気負いすぎて、自分自身が大きな負担を抱えることにもなりえます。
「自分の一言が禁句で、症状の悪化に繋がったら…」と不安になったりすることもあるかもしれません。
うつ病の克服には、焦らずじっくり取り組む姿勢が大切ですし、自分の状態を客観的に見つめることや、生活習慣の改善も必要になってきます。
したがって、家族が病気を冷静に受けとめ、本人の様子をよく観察しながら適切にサポートすることは、うつ病の回復を早めることに繋がります。
実際にうつ病を克服され、その後も再発を繰り返すことなく社会復帰を果たされている方のほとんどは、ご家族がとても大きな支えとなり、それを本人も自覚してご家族に感謝していらっしゃいます。
私がお話を伺う場合も、うつ病に限らずですが、病気を克服するために活用できる有力な“資源”として、ご家族からのサポートを受けられそうかどうか、聞かせていただくことにしています。
「あんなこともあったね」と、いつの日か笑いながら話せる日が来る。 そんな希望を持ちながら、うつ病を発症したご家族が少しでも心穏やかに回復に向かえるように、また、それを支える自分自身も安定した心で接することができるようにはどうすればよいか、ご紹介いたします。
1.うつ病の家族とのコミュニケーションで留意する点
1-1.話の聴き方‐否定せず、気持ちを受け止める
うつ病を発症すると、抑うつ気分などの症状のせいで、周囲の人間に攻撃的な言葉をぶつけてしまうことがあります。家族のちょっとした言葉に過敏に反応して、激しく自責の念に駆られることや、怒りや失望をあらわにすることも多いでしょう。
逆に、「家族に迷惑をかけたくない」という気遣いや「どうせ理解してもらえない、助けてもらえない」というネガティブな考えのために、サポートを拒絶して自分の殻に閉じこもることもあります。
しかし、だからといって家族が本人を気遣いすぎて、腫れ物に触るような扱いをして何時間も接する時間を持たずに放置しておくことは、あまり良くありません。
本人を気遣いながらも“普通に”、“いつも通り”振る舞うことが、本人の安心に繋がります。
そしてその安心こそが、心の安定に繋がり、回復への大きなエネルギーを生み出すのです。
とは言え、本人の気持ちが不安定でひどく惑乱しているようなときには、「うるさい!」と暴言を吐いたり、「ひとりにして!」と自室に閉じこもってしまうようなこともあります。
そういうときには、無理に話そうとせず、様子を見ましょう。 本人も少し落ち着いてくると、自分の気持ちを聞いてもらいたくなるものだと思います。
本人が話を聴いてほしそうであれば、「そんなことがあったんだ」「大変だったね」と共感しながら耳を傾けます。 ただ話を聴いてくれるだけでも、随分と心が休まるものです。
「そんなこと言ったって仕方ないでしょう?」等、言いたくなることもあるでしょうが、決して断定・否定をすることなく、『そう考え、そう感じている本人』を尊重し、受け入れることが大切です。
本人が、誰かを非難したりしても、それをたしなめたり叱ったりするのではなく、 「そうか、そんな風に思うんだね」と、認めてあげること。 「もっとこうすべきだったのに」と正論をぶつけて断じるのではなく、 「こういうやり方もあったかもしれないね」と、柔らかく示してみること。
本人の考えを正そうとして自分の意見を言いたくなったり、もっと前向きな発言を引き出したくなるかもしれませんが、本人のエネルギーが充分回復するまで待ちましょう。
1-2.声のかけ方‐本人の不安やプレッシャーを増幅させないように
うつ病の人に「がんばれ」と言ってはいけないというのはよく聞くかもしれませんが、なぜ言ってはいけないのでしょうか。
その理由は、うつ病はがんばりすぎたために心身が疲弊している状態なので、更なる「がんばり」を課すことは本人にとっては絶望に近く、叱咤されているようにしか聴こえないことが多いためです。
もうひとつには、うつ病を発症すると、自分自身に対する自信が非常に低い状態になるので、「周囲の期待に応えられない自分」を責め、「なんて自分はダメなんだ」とさらに自信をなくすことに繋がるためです。
「一家の大黒柱なんだから」
「お母さんがそんなに弱いことでどうするの。子供がかわいそうよ」
「もっと大変な思いをして仕事をしている人だっているよ」
たとえ本人を励まそうとする意図であっても、プレッシャーをかけたり、他の人と比較するような言葉には慎重になる必要があります。
ご家族がじっくり話を聞いてあげることは、うつ病の回復に大きな効果がありますが、ずっと一緒にいて話を聞き続けることは、聞く側にはとても負担になることです。
必ずひとりの時間を確保するようにして、自分の心の安定を崩さないようにすることが大事です。その際は、
「ご飯の後で話そうね」
「30分くらい買い物に行ってくるので、その後話そう」
「今日は○時くらいに仕事から帰ってくるよ」
といったように前もって話しておくことで、本人の不安を取り除いてあげましょう。
また、調子の悪いことや、できていないことを指摘するのではなく、良くなってきていること、できていることをそれとなく伝えてあげると、本人も自分が少しずつでも普段通りの自分に戻れている実感が得られます。 「また昼まで寝ていたね」ではなく「昨日よりも早く起きられたね」というようにです。 (あまり大げさに頻繁に伝えると、却って本人の重荷になるので注意が必要です)
1-3.「死にたい」「どうせ治らない」…そんな言葉を口にされたら
うつ病の症状として顕著に見られるもののひとつに、『自殺念慮』があります。
気持ちが沈み、あまりにもつらいため「死んだほうがましだ」「この世から消えてしまいたい」と考えるようになります。ほとんどの人が一度は「死にたい」と考えるようです。
うつ病の家族から、「もう生きていたくない」「死にたい」という言葉を口にされるかもしれません。
そんなとき、動揺して「そんなこと言わないで!」と感情的に訴えたり、「死にたいなどと言ってはいけない。家族のことも考えて」と説教したりすることは、本人にとっては“死にたいくらいつらい気持ちを抱いている自分”を否定され、行動を制限されるように感じます。
「これは病気のせいであり、本心ではないのだ」と自分に言い聞かせ、気持ちを落ち着かせることが肝心です。
「死にたいと思うほど、今つらいんだね」と、本人の気持ちに寄り添いましょう。
そして、「あなたがもしいなくなってしまったら、私はとても悲しい。いつも、何があっても私はあなたの味方だから」と、落ち着いて伝えてあげましょう。
2.医師・薬との付き合い方
2-1.経過をよく観察し、本人の状態に合わせたサポートを
うつ病になると、大きく2つのケースに分かれるようです。
① 医師や薬に頼りきり、薬への依存から抜け出せなくなる人
② 病院に行きたがらない人
うつ病の症状自体は、適切に処方された薬を服用することで緩和します。十分な休養と併せて、回復のための土台を作ってくれるでしょう。
しかし、『薬を飲む』ことに依存してしまい、いつの間にかものすごい量の薬を処方されても疑問を持たずに服用し続けるというケースがあります。
それによって回復に向かっているのであれば良いのですが、副作用も見逃せませんし、ある程度回復しても、薬を飲まないことに不安を覚えて何年も飲み続けることになりかねません。
ご家族としては、 ・むやみと薬が増えていないか ・薬を飲んだ後に、状態が悪くなっているようなことはないか それとなくチェックしてあげるとよいでしょう。
もしそのような傾向があれば、本人があまり嫌がるようでなければ、家族が診察に付き添って、本人が医師に自分の状態を正しく伝えられるようにフォローしてあげると良いでしょう。
ただしこの際に、本人の発言を遮ったり真っ向から否定したりして、本人の自信を無くすようなことは避けるようにしましょう。
「医師が話をじっくり聞いてくれない」と、不満を持つ人も多いようですが、本来、医師は『症状に合わせて薬を処方する』のが本分ですので、患者の話を充分に聞いてあげることができないのが現状かもしれません。
そういうことからも、病院で適切に薬を処方してもらいながら、カウンセリングを並行して受けるというのはとても効果があります。実際、うつ病の再発が最も少ないのは、このやり方を実践した場合です。
2-2.病院を勧めるときは、本人の意思を尊重して
②の、病院に行きたがらないケースですが、 明らかに様子がいつもと違うと家族が感じても、本人の意思を考慮せず無理やり病院に連れていくことは、家族に対する不信感が芽生えてしまうので、注意が必要です。
あくまでも本人の意思を尊重している姿勢を保ち、様子を見ながら、時期をみて「行ってみない?きっと少しでもつらい症状が和らぐと思うから」と声をかけてあげるとよいでしょう。
本人が通いやすそうで、信頼が置けそうな病院はどこか、アンテナを立てて探しておくことも家族にできるサポートのひとつかもしれません。
3.うつ病の家族を支える立場の方々に、心がけていただきたいこと
3-1.家族がうつ病になったことを、どう受け止めるか
家族がうつ病になると、なかなかその現実が受け入れがたく、「どうしてこんなことになってしまったのか」と原因を突き止めようとしたり、「もっと妻を(夫を)かまってあげていたら、ケアしてあげていればよかった」と後悔して自分を責めることも多いようです。
他にも私がお聞きした中では、 「身内から、『夫であるあなたのせいだ』と言われた」、 「姑から『あなたがしっかりしないでどうするの。彼が治るかどうかはあなたにかかっているんだから』と叱咤され、涙があふれた」といったケースもありました。
うつ病に限らず、精神疾患と呼ばれるものは、単一の要因で発症するものとは言えません。
本人の性格傾向や環境要因、体調などの掛け算で引き起こされるものです。 決して家族が罪悪感に押しつぶされる必要はありません。
「これからどうすればいい?」と不安になることもあるかもしれません。しかし、ここは心をなるべく落ち着かせ、冷静に受け止めることが大切です。
3-2.まずは支える側の『心の土台』を安定させること
うつ病の克服には、長期間の取り組みが必要になりますし、うつ病の症状のせいで人が変わってしまったようになった家族を支えることは、かなりの精神的・肉体的な負担がかかります。
実際に、うつ病は身近な人にうつりやすいと言われており、例えば夫がうつ病になり、必死でサポートしてきた妻も発症するといったようなことが多くあります。 ただでさえ、うつ病の家族のネガティブな言動に接しているにも関わらず、それに加えて、自分自身を精神的に追い詰めてしまう傾向があります。
「早く治ってほしい」という焦り、
「なぜこの人はこんな考え方しかできないのか。もううんざり。いい加減にしてほしい」という憤りや失望、そして、
「こんなふうに思う自分は何てひどいんだ。そもそも自分の関わり方が悪かったから、こんなことになったのではないか」という罪悪感がせめぎ合うようです。
家族のこのような葛藤は、少なからず本人にも伝わり、
「家族にこんなに迷惑をかけている。こんなに困らせている。なんて私はダメ人間なんだ」と余計自分を追い込むことにもなってしまいます。
うつ病に限らず、心の病気の回復のためには、安心できる環境を整えることが何よりも重要になります。 本人の状態で一喜一憂せず、調子が良さそうであれば「良かったな」、悪そうなら「こんな日もあるな」と、ゆったりと構えることが肝要です。
どんな状態でも自分を受け入れてくれると感じることができれば、本人にとって家族は、『揺るぎない、安心をくれる場所』であることができます。
そのためにも、自分自身がリフレッシュする時間を積極的に作ったり、抱え込まずに専門家に相談したりするなどして、『心の土台』を安定させることが大切です。
趣味にいそしむことや、友人とお茶に出かけることも良いでしょう。
「私だけこんなに楽しんでしまって申し訳ない」と外出を極端に控えたり、今まで楽しんできた趣味を手放したりしてしまうと、気持ちが疲弊してしまってうつ病の家族を支えきれず、共倒れを引き起こしかねません。
家族である自分自身の『心の土台』が安定してこそ、本人に安心を感じてもらうことができ、うつ病を克服するエネルギーの源となります。
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