うつ病 の克服と予防
うつ病は、自分を責めて我慢し続け、心身が疲れきっている状態。克服へのプロセスは『自分を認めること』から始まります。
【はじめに】
「うつ病は心の風邪」というように、決して特別な病ではなく、誰でもかかりうるものとして認知され始めています。 多くの方が抵抗なく、精神科やカウンセリングの門をくぐれるようになったことは良い傾向とも言えます。
しかし風邪とは違って、すぐに治るものではなく、放置すると症状が悪化する可能性も低くありません。 うつ病と診断されて月日が過ぎているのに、なかなか治らずに慢性的な症状に悩まされることも多く、回復しても再発する確率が高いことも問題になっています。
本人ももちろんつらいですが、家族や大切な人たちを巻き込む危険性もはらんでいます。
実は私自身、外資系コンサルティング会社で働いていたとき、うつ病で苦しんだ過去があります。
「私は能力が足りない。もっともっと頑張らなくては、成果を出すことができない」と勝手に自分を追い詰めていました。
夜に眠れないこと、動悸が止まらなくなること、いつも自信がなくて周りと自分を比べていること。
そんな悩みを誰にも気づかれないように、必死で明るく、快活に振る舞っていました。
今の私は、あのときの私が「こんなカウンセラーに会えていたら、自分を否定してボロボロにならずに済んだ、もっと力を発揮していろんなことにチャレンジできていた」と思えるカウンセラーになれたのではないかと、
そして、そうあり続けるために日々精進を重ねなければならないと思っています。
うつ病は、これまでの働き方や環境、考え方の傾向、そして『自分が本当に大切にしたいことは何か』を見直すチャンスでもあります。
自分の人生をより良く生きるための一歩を、一緒に踏み出しませんか。
一言でうつ病といっても、発症した経緯や症状は人それぞれです。 うつ病だと診断を受けていなくても、「このままだと…」と感じている方もいらっしゃるかと思います。
ケア&キュアでは、皆様の個々の状態に合わせたカウンセリングを行っております。
いま、うつ状態に苦しんでいる方。 うつ病で休職しているけれど、このまま復職するのが不安な方。
どうぞ安心してご相談ください。
•うつ病の特徴は?
精神的にも身体的にもつらい症状が長期間続きます 近年は30~40代の働く人に増えています
うつ病の患者数は年々増加し、2008年の段階で100万人を超えています。家族や友人、職場の同僚にうつ病の人がいるという人も少なくないでしょう。
一般に、女性は男性よりなりやすいと言われています。女性はホルモンバランスの崩れによって精神的に不安定になりやすく、そこに「良き妻でなければ」「良き母でなければ」といった重圧が加わるなどの原因も考えられます。
特に近年目立ってきているのは、30~40代に多い働く人のうつ病です。一旦症状が回復して復職しても再発する確率が高く、2度3度と休職に追い込まれるケースがあることも問題となっています。
うつ病は、精神的にも身体的にも様々な症状が現れます。
憂鬱な気分が続き、以前は興味を持っていた趣味等にも興味が持てなくなります。
体がだるく、思考力や集中力も低下し、寝つきが悪いなどの睡眠障害も見られます。
誰しも、仕事でミスをしたり、人間関係でトラブルがあれば気分が落ち込むものですが、大抵はしばらくすると元気になります。一方、うつ病は上記のような症状が2週間以上、ほぼ毎日続き、日常生活に支障を来します。
うつ病は他にも、その症状や病気になる過程によって、「双極性障害」「非定型うつ病」など様々なタイプに分類されます。
「双極性障害」は、以前は躁うつ病とも言われていたもので、うつ状態と躁状態が交互に現れます。躁状態のときには気分が高揚し、何でもできるような気分になり、高額な買い物をしたり徹夜を続けたりすることがあります。
「非定型うつ病」は、近年メディアの影響で広く認識されてきた「新型うつ」と同義として扱われることが多いものです。楽しいことなどのきっかけで一時的に気分が良くなることや、過眠・過食、他罰的な言動、他人からの批判に過敏といった特徴があり、20~30代の若者に多くなっています。「仮病だ」「怠けている」と誤解されることも多いようですが、実際に悩み苦しんでいる人たちがいることも事実なのです。
•自覚はどう表れる?
様々な自覚症状がありますが、本人も周囲も見過ごしてしまうことが多いようです
うつ病は身体的症状にも現れやすく、自覚症状のある心の病ですが、初期の軽い段階では、本人が「体調が一時的に悪いだけだ」「疲れが溜まっているんだ」と見過ごすなどして、自覚していないこともあります。
うつ病が進行していくと、症状に対する感覚も段々鈍くなり、認識する力そのものが低下していくため、結果的に自覚できないまま悪化してしまいます。
加えて、うつ病になりやすい人というのは責任感が強く自分に厳しい人が多いため、「自分がダメな人間だからだ」「頑張りが足りない」などと自分を叱咤し、つらくてもうつ病だと思わずに走り続ける傾向があります。
また、うつ病かもしれないと自覚しても、家族や職場に迷惑をかけたくないという思いから、むしろ普段より明るく振舞おうとすることもあるため、余計に早期発見・早期治療が難しくなります。
うつ病の場合、「遅刻・欠勤が目立ってきた」「ボーッとしていることが多い」「身だしなみに気をつけなくなってきた」等、いくつかの目に見えるサインが現れるので、周囲の人が気づいてあげることが大切です。
自分や周囲の人達同士が、お互いに「なんだかいつもと違う?…」と気づけるよう、普段から挨拶を交わしたり、接点を持つようにすることが、うつ病の早期発見と予防に役立つでしょう。
•原因として多いのは?
自分を追い込みすぎたり、ストレスを抱え込む性格や、環境要因などが複合的に作用します
うつ病を発症する原因は単一でなく、もともとの性格や考え方の傾向、環境要因などで引き起こされるストレスなどが複合的に絡み合って発症します。
うつ病になる人は、まじめで完璧主義、自分に厳しく、責任感の強い人が多いとされています。このような性格の人は、成果にこだわるあまり、現状に満足せず自分を追い込みすぎる傾向が強く見られます。
また、それ以外の性格でも、「“~しなければならない”、“~であるべき”、という縛りが厳しい」「他人の目や評価を過度に気にする」といった考え方の傾向がある人は要注意と言えます。
上記の傾向のある人は、同じような環境要因があったとしても、そうでない人と比べて「それをストレスだと強く感じてしまう」更に「そのストレスを解消できずに抱え込む」という事態に陥りやすいのです。
次に、ストレスを引き起こしやすい環境要因ですが、親近者との死別や離別、離婚、失業、職場でのトラブル、家庭内のトラブル、育児の負担、身体的な病気、睡眠不足(特に5時間未満の睡眠は要注意)などが挙げられます。
そして、必ずしもつらいことや悲しいことだけではなく、結婚、入社、昇進、栄転、新居への引越しなど、一見喜ばしいことでもうつ病を発症することがあります。それまでの生活リズムが崩れること、違った”役割”を負うことなどのすべてが、ストレスとなりうるのです。
過去の、あるいは過去から続く現在の親子関係が遠因になっている場合もあります。
幼少期の家庭内不和・過干渉・DVや、現在の親子関係の軋轢のために、親に対する許すことのできない思いがあると、うつ病に繋がることも多く見られます。
上記のような、強いストレス、あるいは長年のストレスの蓄積のために、脳内の神経伝達物質である『セロトニン』が欠乏している状態が引き起こされ、うつ病を発症すると考えられています。セロトニンは精神の安定に効果を発揮し、リラックス状態や睡眠のコントロールに深く関わっています。
うつ病には遺伝も関係していると言われていますが、遺伝病ではありません。確かに、親子・兄弟といった血縁の近い親族にうつ病の人がいると、発症する確率が高くなるというデータがあります。しかし、性格や考え方の傾向など、うつ病になりやすい遺伝素因が受け継がれるのであり、あくまでも発症リスクの一つでしかないという見方が正しいでしょう。
・うつ病の主な症状 10項目
うつ病は精神的にも身体的にも様々な症状が表れます あなたや、周囲の人に心当たりはありませんか
(1)強い抑うつ気分
うつ病の特徴的な症状です。憂うつで、重苦しい気分が続きます。このような状態を「抑うつ」といいます。
気分が晴れず、何もやる気が起きません。ため息が目立ったり、表情が暗く、落ち込んだ様子になります。
また、ネガティブな発言も多くなるため、周囲の人も気づきやすいのですが、元々の性格だと誤解されることもあります。 抑うつのために、イライラしたり、怒りっぽくなることもあります。
こうした症状は午前中に特に顕著に見られ、午後から夕方にかけて回復していくことが多いとされています(『日内変動』と言います)。
(2)興味や喜びの喪失
「強い抑うつ気分」と並んで、うつ病の症状において大きな特徴となるものです。
周りの物事や活動に、興味や喜びを感じられなくなります。 行動力が著しく低下し、これまで楽しんできた趣味やスポーツ、旅行や外出なども、やる気が起きなくなってしまいます。
意欲を持って取り組んでいた仕事にも手がつかないといったことも見られます。 人と会って話すことも面倒になります。おしゃれや服装にも興味が湧かず、身だしなみに気を配らなくなり、一気に社交性が乏しくなります。
異性への関心や、性的な欲求も低下します。 元々が活動的であった人であれば、周囲からは人が変わってしまったように見えることもあるでしょう。
(3)食欲の減退または増加
一般的に、うつ病では食欲が低下することが多く、そのために体重が1ヶ月で数キロも現象してしまうこともあります。 特に朝食はまったく食べる気が起きなくなり、好物にも興味を示さず、「何を食べてもおいしくない」という状態が続きます。
そのため、睡眠不足と並んで、体力を維持できずに回復を妨げる要因となっている側面もあるでしょう。
反対に、食欲が増加して、甘いものや炭水化物などの特定の食べ物を過食してしまうケースもよく見られます。
(4)睡眠障害(不眠または仮眠)
うつ病にかかった多くの人に、不眠の症状が現れます。
疲れていても寝つきが悪くなり、やっと寝付いても眠りが浅く、重く苦しい夢ばかりみて夜中に何度も目を覚ましたり、早朝に起きてしまったりします。
そのため、熟睡感がなく、体も非常にだるくなるため、起き上がれずに布団の中で悶々とし、自分を責め続けることも多いのです。
睡眠不足が原因で、日中に集中力が欠如して仕事でミスをしたり、そのために落ち込んだりイライラするなど、他の精神的症状にも多大な影響を及ぼします。 食欲の低下と並んで、体力を維持できずに回復を妨げる要因となっている側面もあります。
反対に、夜の睡眠が極端に長くなったり、日中も寝てばかりいるといった過眠症状が現れることもあります。
(5)精神運動の障害(強い焦燥感・運動の制止)
動作が鈍くなったり、話し方がのろのろと遅くなったり、口数が極端に少なくなったりします(精神運動の制止といいます)。
今までてきぱきと問題なくこなしていた家事や仕事、些細な作業にも時間がかかるようになり、動きも緩慢になります。周囲の人も変化に気づきやすいのですが、怠惰な態度の現れだと誤解されることもあります。
反対に、強い焦燥感に駆られてじっとしていられず、そわそわとして落ち着きなく体を動かしたり、ウロウロと歩き回ったりするようになることもあります。貧乏ゆすりが止まらなくなる、早口でせき立てられるように話し続ける、といったことが見られる場合もあります。
(6)易疲労性、気力の減退
ちょっとしたことでもすぐに疲れてしまい、休んでも疲れが取れません。体が非常に重く、強い倦怠感を感じるようになります。そのため、何もやる気が起きず、それまでは難なくこなしていた家事や仕事も滞りがちになり、周囲には怠けているように見えてしまうこともあります。
本人は、「何とかしなければ」と気持ちは焦るのですが、体も思うように動かず、気力も低下しているので、何とか取り組んでも長続きしません。
そんな自分を責め、ますます症状が悪化することもあります。
(7)強い罪責感
自分は価値の無い、何の取り柄もない人間だと思い込んだり、根拠もなく自分を過剰に責めるようになります。
自分の些細なミスを過大評価して「取り返しのつかないことをしてしまった」「自分のせいで皆が迷惑している」と感じたり、不況で会社の業績が落ちるなど、自分とは関係のないことでも「自分の責任だ」と思い込み、そこから抜け出すことができなくなります。
自分の能力を過小評価しているので、新しい仕事や、責任のあることを任されたりすると「自分にはできないのに…」と負担に感じます。たとえ成果を挙げたとしても「大したことではない」「誰でもできること」として、自分自身にプラスの評価を与えません。
更には、人から不当な扱いを受けた場合でさえ「こうなったのは自分が悪いせいだ」と結論づけます。
このような無価値感、罪責感が高じると「自分はこの世からいなくなった方が良い」と考え、自殺念慮へ発展する可能性もあります。
(8)思考力・集中力の低下
注意が散漫になって集中力が低下したり、思考が働かなくなることがあります。そのために仕事や家事が以前のようにこなせなくなったり、学校の成績が落ちたりするようになります。
また、決断力が低下して、大したことでなくてもあれこれ考えて何も決められなくなります。 初期の頃には、「アイディアが浮かばない」「考えがまとまらない」「物忘れがある」といったことで現れますが、症状が進んでくると、今まで難なくこなしていたこともできなくなったり、相手の話していることが理解できなくなってきます。
気力の低下も伴って、実際に仕事の能率も落ちてミスをしたりもするので、「自分はダメな人間だ」「皆に迷惑をかけている」という無価値感、罪責感が生じ、ますます症状が悪化することもあります。
一般に、結婚、退職、転職、離婚、離別といった大きな決断はうつ病のときにやらない方がよいとされます。環境の急激な変化がうつ病を悪化させるという理由もありますが、このように思考力や決断力が低下している状態のため、適切な判断が下せないという理由もあるのです。
(9)自殺念慮
気持ちが沈み、あまりにもつらいため「死んだほうがましだ」「この世から消えてしまいたい」と考えるようになります。
この『自殺念慮』は、うつ病の症状として顕著に見られるものであり、ほとんどの人が一度は「死にたい」と考えるようです。 「死にたい」という考えが出てきてしまったら、「これは病気のせいであり、本心ではないのだ」と自分に言い聞かせ、気持ちを落ち着かせることが肝心です。
家族や友人など周りの人に「死にたい・・・」「楽になりたい・・・」と漏らすこともあるでしょう。その場合、もし周りの人から「死んではいけない」と説教されたり、はぐらかされたりすると、「説教されるようなことを言ってしまうダメな人間だ」と自分を責めたり、「理解してもらえない」と失望してしまい、症状に拍車をかける可能性もあります。
一般に、うつ病の症状が重いときには、「死にたい」と思っても実行に移す気力も行動力もありません。しかし、少し症状が回復すると、考えが浮かべばすぐに実行に移す危険があります。周りの人は、外見上元気になったからといって安心せず、注意して見守ることが大切です。
(10)その他の身体的症状
その他、うつ病に伴う身体症状として、次が挙げられます:
全身の倦怠感 頭痛 めまい 吐き気 動悸 息苦しさ 肩こり 立ちくらみ 耳鳴り 難聴 背中の痛み 胃痛 便秘
ひとつの症状にとどまらず、いくつかを併発することもあり、また次々と変わっていくこともあります。
初期の段階では、精神的症状の前に身体的症状のみが現れることもあるため、内科などを受診し、うつ病と診断されないことがよくあります。 身体症状があるのに検査で異常がない場合は、うつ病の可能性を考える必要があるでしょう。
・うつ病の治療と克服
「焦らず、じっくり」が克服の”早道”です 十分な休養で克服の土台を作りながら、体と心の声を聴きましょう
うつ病の治療には「休養」「薬物療法」「カウンセリングなどによる精神療法」の3大柱があります。
うつ病の人は、ストレスの蓄積や、うつ病によって引き起こされる精神的・身体的症状のために心身ともに非常に疲弊している状態と言えます。したがって、十分な休養をとることは、回復の土台作りとして必須と言えます。
結婚、退職、転職、離婚、離別といった大きな決断は、急激な環境の変化がうつ病を悪化させる可能性があるため、避けた方が良いでしょう。気分転換に旅行などに行くのも、思わぬストレスに繋がることもあるので、慎重になる必要があります。
うつ病の症状は、脳機能の異常によって脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることによって起こるので、薬物でバランスを正常化する治療法が用いられます。
うつ病ではSSRIなどの抗うつ剤がよく使われ、抗不安薬や睡眠導入剤なども併用することがあります。 休養と薬物療法により、うつ病の症状自体は緩和されることがわかっています。
しかし、症状の慢性化や高い再発率が示すように、うつ病を根本的に解決するためには、うつ病を引き起こした原因そのものにアプローチする必要があります。
そのためには、カウンセリングなどの精神療法が欠かせません。
「今、こんなにつらい」「こんなことが不安だ」といった本人の気持ちを受け止め、寄り添いながら、丁寧にお話を伺います。そして、本人の置かれている状況を客観的に見つめながら、ストレスを生み出す考え方の傾向や行動パターンを見直していきます。
この場合、物事の受け止め方や考え方(=認知)を見直して行くという『認知行動療法』が非常に有効となります。ただし、専門家が一方的に行うものではなく、本人が自主性を持って一緒に考えていくことが、克服の大きな鍵を握ります。そのため、自分がうつ病である、あるいはうつ傾向があるという自覚が必須と言えます。
その他、うつ病を引き起こすきっかけとなった環境要因をできるだけ変える工夫も必要でしょう。 克服には、ある程度の期間が必要になります。良くなったり、悪くなったりを繰り返しながら、少しずつ元の生活に戻っていくものです。焦らず、じっくり向き合いましょう。
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